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香山滋「妖蝶記」「海鰻荘奇談」・・・The Thunders

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いつのまにか隆盛を極めるようになった幻想文学だが、一時期は忘却の彼方に押しやられていた時期があったらしい。

75年に刊行された香山滋「妖蝶記」に寄せた中井英夫の文章を引用すると、「香山滋も大坪砂男もともに異色作家として埋もれ忘れられ、その死によって蘇るというその岐れ道は、本人にとってばかりではない、読書界にとっても皮肉な成り行きとしか言えない。肝心な作品の質は、いまもまだ十分に議論されているとはいいがたいのだ。」

 

ボクがこの人を知ったのも、当時愛読していたリトルマガジン「牧神」の巻末広告を通じてだった。

「妖蝶記」という甘美なタイトルに惹かれて早速購入したものの、ラストがあっけなさすぎて余韻が残らなかった。

4つの短編が収録されたこの本で言うならば、冒頭の「蝋燭売り」のほうが好みに合う。

 

牧神社より6年も早く、昭和44年(1969年)に桃源社から「海鰻荘奇談」が発売されているのを知っていたが、古本屋で見かけたことがなかったので、忘れていた。

と、先日、古本屋を覗いたらこの桃源社版があったのだ。

いまは文庫でも読めるんだから、それでいいじゃないか、とはならない。

桃源社に思い入れのあるボクとしては、桃源社版以外では読みたくないのだ。

「海鰻荘奇談」は評価の高い作品だけに、さすがに構成の巧みさ、幻想性の高さ、怪奇性、古生代生物の薀蓄、意外性に富んだ謎解き、何から何まで完成されていて、いつまでも余韻をひく。

たぶんこの作品に関しては色んな情報が出回っていると思うので、ボクは取り上げない。

かわりに取り上げるのは「ソロモンの桃」だ、

2冊に収められた12編中、もっともスケールの大きな冒険小説の趣が濃い。

地理的にイスラエルからゴビ砂漠に擬したダンガ・デザートまで。6000年の時間を旅することになっている。

インド獅子(この地にライオンはいないが、いたことになっている)の捕獲を目的にダンガ・デザートに踏み入った主人公が、ソロモンが隠した秘宝を発見する物語で、代々ダビデの子孫がインド獅子を飼いならしてうちまたがり、秘宝を守護している。

順番から言えばダビデの次がソロモンで、2人とも紀元前10~11世紀のイスラエルの王だが、知ったこっちゃないとばかりに筆が流れていき、シュメール人と同一視しているので6000年前、というわけだ。

目くじらをたてずに奇想に身を任せればよい。作者も知っていながら奇想を書き連ねているのだから。

ソロモンの秘宝に至る道はただひとつ「ソロモンの桃」という言葉の秘密を解くだけなのだが、あっと驚く仕掛けになっている。

いま、バグダットからダンガ・デザートのソロモンの宝が眠る地まで、地下鉄道を建設して出かけていく男がいる。

主人公の前任者で8年前に宝の場所を突き止めながら、岩の扉を開けることができず、扉の外にこぼれた宝石を拾い集めて莫大な財産を築き、この鉄道事業に精を出してきた。

彼の目的は財宝ではなく、砂漠の地下に眠る莫大な石油資源を開発して、ここに失われたイスラエル王国を建設することだ。

当然ダビデの子孫のインド獅子部隊のことも知っているので、アフリカ奥地から凶暴な象部隊を引き連れている。

絶滅したはずの古代象ということになっていて、砂漠の真ん中で戦うインド獅子部隊と象部隊の激突は手に汗を握る。

ダビデの子孫の長は破れ、全権を男の手にゆだねる。

男は秘められた財宝なんてものは百害あって一利なしだと、原子爆弾で粉微塵に吹き飛ばす。

ゴジラの原作者らしい発想だと思う。

特に感動する作品ではないが、この作家にとっては珍しい部類に入るんじゃないだろうかと思ったので紹介した。

 

桃源社版の解説を若き種村季弘氏が書いていて、その読みの深さにすごいなあ~の一言。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の音楽はオランダのバンド。

いちどやったかもしれないが、気に入ってる曲だからいいのだ。

 

Thunders で Take Me The Way I Am

https://youtu.be/Xo3fqgXJRNI

 

 

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マイナーな60年代ビートミュージックと駄洒落、読書レビュー。

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