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織田作之助「二十歳」「青春の逆説」初版本・・・The Searchers

織田作の長編青春小説「二十歳」は昭和16年2月に、続編の「青春の逆説」は7月に、書下ろしとして萬里閣から出版された。

ある意味、自伝的ではあるが、私小説に異を唱えていた作家なので主人公の毛利豹一はそのまま織田作ではない。
体験は枠組みだけを借り、織田作の作り上げた少年(青年)は内的欲求に従って自在に動き回る。

「何よりも」と青山光二は言う。「織田作は決して毛利豹一のような美少年ではなかった」と(笑)。


16歳の可憐な少女であった母のことから始まり、自尊心と自己嫌悪が表裏一体をなす強烈な自意識を持った主人公を描く。

ちょっと逸れるが、母は美人だったので、幼い豹一を連れて、高利貸しの男と3度目の結婚をする。

この高利貸し安二郎が、どうしようもないどケチで、小学校までは義務教育なので眼をつぶっていたが、中学へやる金はびた一文出さないという。

母は夫からお金を借りて豹一を中学に通わせる。

安二郎は当然の如く、妻が借りた金に利子をつけて毎月取り立てるのだ。

「安二郎は算盤を弾いているときほど楽しいことは、またとないのだ。ことにそれが女房に貸しつけた金の元利計算と来ては、ぞくぞくするほどたまらない」

こんな大笑いできる文章が織田作の持ち味だけど、当時の大阪庶民の実相でもあったわけだ。

特別な人種というわけでもなかったのだろう。


中学時代は、豹一をいじめていた同級生を悔しがらせて満足するために、彼らが崇拝する町イチバンの美女と謳われた女学生と仲良くなるも取り立てて好きな女性というわけではなかった。

三高(現在の京都大学)を中退し(織田作も同様)、街の小さな業界紙に勤めて辞め、勘違いで入ったダンスホールで、過剰な自尊心を満足させるために100数えたら目の前の女の手を握って恋人にしてやろうと決意する。

豹一はまだ女性と手を握ったことさえないのだ。


ここまでが「二十歳」で、八十九まで数えたところで終わっている。


「二十歳」と「青春の逆説」の2冊を合わせて「青春の逆説」ということもあり、その場合は前者を前篇、後者を後篇と言ったりもする。

後篇、すなわち「青春の逆説」は「・・・九十、九十一.九十二、九十三・・・」とかぞえるところから始まる。

昔、解説したのでこれ以上は省くが、萬里閣初版には「作者のノート」が付してあるので、全文書き写す。

短い文章だからだ。

「この作品は先に出した「二十歳」の続篇に当たるもの。「二十歳」の続篇だから「二十一歳」だろうと、ひやかす人もあったが、主人公の毛利豹一はこの作品を通じて依然として二十歳ゆえ、そういう題をつけるわけにはいかなかった。また「続二十歳」というのは、続の下に数字がつくのは、変だと思いこれも敬遠した。
結局、「青春の逆説」という題にしたのだが、この作品の主人公は全く逆説的にしか青春を生きておらず、また、作者の創作方法もつねに作者自身の青春を逆説的にしか示さざるを得ないという現状であるから、この題名は敢えて藪から棒のものではない。
世にいわゆる「青春」と目されているものへの、作者のひそかな抗議を、この作品から汲み取っていただければ、作者は満足である。
終わりに、この作品に出て来る人物にはいささかのモデルもないことを断っておきたい。

昭和16年初夏。

大阪にて 織田作之助」

新字新仮名に改め、一部の漢字はひらいた。


ちょっと前に紹介した現代社の「織田作之助作品集1」(昭和31年3月31日刊)の目次と巻末広告。

手持ちの、発禁処分になった昭和16年の「青春の逆説」初版本表紙。

奥付写真は先に掲載した。

ちなみに、「二十歳」初版本は学生時代に古本屋で見かけたが、懐具合不如意のため後日訪ねたときは売り切れていた。

もう初版本収集の趣味も失せたので、見かけても購入しないだろうな。




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赤とんぼとシオカラトンボの写真が上手く撮れた。

飛んでいる被写体が上手く撮れると気持ちがいい。




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今日の音楽も昔の記事の採録だ。

2007年というと、ブログを始めた年だが、いまなら当たり前にネットに転がっている情報さえ手に入らなかったのだ。今昔の感がある。





スタークラブの Searchers




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ドイツ、ハンブルグにあった Star-Club といえば、ビートルズファンなら誰でも知っているが、デビュー前のサーチャーズが、ここで演奏したライヴ盤のことは以外と知られていない。

ひとつには入手困難なこと、もうひとつの理由は英国で発売されなかったこと、によるのだと思う。

オリジナルはサーチャーズがデビューし、Sugar and Spice がヒットした63年10月、ドイツのレーベル Philips (Star-Club Records 名義)から発売された。

(彼らが契約した Pye じゃないことに留意)。

86年、ドイツの Line Music から再発された盤が掲載の写真。

いつまでたってもCD化されず、困ったもんだと思っていたのだが、02年にドイツの Bear Family からCDが発売されている、ということをつい最近知った。

そのCDの解説によると、録音は63年3月1日のことだという。

ところがボクの持っている再発盤では、文脈上62年としか読めないのだ。(はっきりとは書いていない)。
いったいどっちが正しんだろう。
(一応念押ししておくと、彼らが Sweets For My Sweet/It's All Been A Dream でデビューしたのが63年6月)。

しかし、マニアでもない一般のファンには、そんなことはどうでもよい。
彼らのライブ演奏が楽しめると分かっただけでありがたいのだ。

そしてデビュー前から、彼らの音楽は完成していたのだとわかればいいのだ。
この盤でしか聴けない曲があるので、以下曲名を紹介しておく。




A面 

Sweets For My Sweet
Ain't That Just Like Me?
Listen To Me
I Can Tell
Sick And Tired
Mashed Potatoes

B面 

I Sure Know A Lot About Love
Rosalie
Led In The Game
Hey,Joe
Always It's You
Hully Gully
What'd I Say


個人的には、ジミヘンで有名な Hey,Joe のサーチャーズヴァージョンが入っているのが嬉しい。異なったアプローチなので、聴き比べを楽しんでいる。

redsさんが昔の記事を掘り起こしてくださるそうなので、熱心なファンのために追記しておくと、彼らの2ndシングル Suger And Spice/Saints And Searchers は同年10月だが、1ヶ月前の9月に、Philips から Sweet Nothin's/What'd I Say(Philips BF 1274)が発売されている。多分フィリップスが勝手に発売したはずで、公式ディスコグラフィーに記載されていないはずだ。

もうひとつ加えると、このアルバムの前に、フィリップスはスター・クラブで録音したマージーバンドのコンピ盤 Twist At The Star-Glub, Hamburg(Philips BL 7578)をリリースしており、この中にサーチャーズの演奏が3曲含まれている。Sweet Nothin's という曲はその折の演奏だろう。

このアルバムは写真を見たこともなければ、データもないので、どんな曲、どんなバンドが収録されているのか知らない。
ご存知の方がいたら教えてください。

ひょっとしたら、このコンピ盤が62年録音で、写真のライヴはCD記載(現物を持ってないので確認はしていないのだが)のように63年なのかもしれない。



追記:アバちゃんから「1965年10月号のミュージックライフ誌で調べたら、サーチャーズ1962年10月にスタークラブ に出たときの録音と書いてあります。」
のコメントをいただいた。

やはり62年の演奏が正しいようだ。ただし、リリースは63年。



以上のことは2007年当時の記述。

現在では Wikipedia に記述が現れている。

更に追記しておくと、このレコードはもうボクの手元にはない。大のサーチャーズファンで、ボクのブログのファン登録第1号になってくださった R さんにプレゼントしたからだ(2019年7月30日記)。


ライヴ盤の記事だから動く彼らがいいよね。

64年の映画 Saturday Night Out に出演したときの彼ら。

https://youtu.be/_YRF9lmhJi4?list=PLheq_Q1T5fbzpPuiU-66VDh6b6IS1xgEu
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コメント

No title

自尊心と自己嫌悪が表裏一体をなす強烈な自意識を持った主人公・・・

二十歳の頃は、みながそんな主人公、そんな気もします。

トンボ綺麗に撮れていますね~!
どんどん写真の腕を上げられていますね(^_-)-☆

Re: No title

まこちゃん、まだFC2の使い方に慣れてないので、コメントに気づくのが遅くなりました。
コメント有難うございます。

10代の頃は、誰もが自意識過剰でいろんなことに悩みますよね。
だから、この小説の主人公は他人事じゃなく感情移入できます。

おお~写真を褒めてくれて有難うございます~~!

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マイナーな60年代ビートミュージックと駄洒落、読書レビュー。

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