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ネルヴァル・・・Pete Morticelli - Lost

ネルヴァルを語るのは難しい。
だから本の紹介だけに留めておく。

最初にネルヴァルを知ったのは高踏的なリトルマガジン「思潮」6号(72年)でだった。
下段、右下がその6号で、「G・ド・ネルヴァルと神秘主義」と題した特集号。
写真左上が創刊号で70年刊。
右に向かって順に6冊。
たしかこの6号が最後だったと思うが、確かではない。
ついでに言うと、リアルタイムで買ったのは5号と6号だけで、1号から4号までは学生時代に古本屋を捜し歩いて購入した。
のちに80年代末から90年代初めにかけて、浅田彰を迎えて復刊したそうだが、ボクは知らない。


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いま高踏的と言ったが、「思潮」はボクのような頭の悪い学生でも読めたが、「パイデイア」となると、ほとんど大学の紀要同然で、全く歯がたたなかった。
なにしろ、当時1~2編の邦訳しかなかったミシェル・フーコーを取り上げて、ああでもないこうでもないと論じていたのだから。


下の写真は75年~76年に筑摩書房から刊行された「ネルヴァル全集(全3巻)」。
正確には選集で、97年から03年にかけて同じ版元から6巻の全集が出ていて、現在ではそちらで読まれているはずだ。

この75年版では、本国フランスにおいてさえ、定本と呼べる全集はまだないと断っているが、その後フランスで定本と呼べる全集が現れたのかもしれない。
違うかもしれないが、この6巻本に目を通したことがないのでその辺のことは分かりません。




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が、今日、日本でも有名な作家になったらしく、ネットで検索すれば次々にヒットする。
めんどくさいので、ボクはイチイチ、アクセスしなかったが。

平成元年に角川文庫リヴァイルコレクションとして復刊されたのが、写真の「暁の女王と精霊の王の物語」。「東方紀行」収録の独立した1編だ。
中村真一郎先生が邦訳したのが昭和18年(角川文庫収録は戦後の昭和27年)だそうで、国家主義の吹き荒れていた戦中に出版されたのに驚く。

深いところで読み解くのが難しいので、検閲官には彼が叛逆の詩人だと理解できなかったんだろう。

その前後だったと思うが、新潮文庫のリクエスト復刊シリーズでも「火の娘」(中村先生訳)が現れ、買ったのは確かなんだけど、どうしても見つからない。
なので写真はネットから。



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1855年、パリの裏街で亡くなったこの狂詩人は、今日、現代文学の先駆者としての評価を勝ち得ている。

ボードレールが高く評価したのは割と知られているが、あのプルーストも高く評価して一文を草していて、75年版の全集月報に、3回にわたって井上究一郎訳が採録されているのは嬉しい。

「オーレリア」の有名な冒頭、「夢は第2の人生である」が広く知られているように、ボクが知ったころは、夢(無意識)と文学との関わりで語られることが多かったと記憶する。


が、彼はカバラのようなオカルトの知識も豊富だったので、「暁の女王と精霊の王の物語」中の「地下の世界」は、オカルティズムの匂いがぷんぷんしていて、ボクには錬金術の死と再生の体内めぐりを連想させる。
読み解くのが難しいと言ったのはそういう理由からだ。

もっとも、深く突っ込まなければ、すこぶる面白い小説だ。

暁の女王(シバの女王バルキス)と精霊の王(ソロモン)の物語で、戦前訳の中村真一郎訳に入沢康夫先生が、現代人が読みやすいようにところどころ手を加えた形で収録されている。

例えば、ソロモンが大神殿の建築を企図した際、実際に設計図を書き、建築を担う大芸術家アドニラムが彫像の姿をデッサンするシーン。


蠟の塊を前にして、筋肉の弾力を見現そうと努めて(中村真一郎訳)
蠟の塊を前にして、筋肉の弾力ある動きを見究める術を学ぼうと(入沢康夫補訳)



シバの女王の物語は多くの人が書いているが、以前取り上げたアナトール・フランスの「バルタザール」もそうで、ネルヴァルのシバの女王が旧約聖書、列王記に近い形で進行していくのに対し、「バルタザール」のシバの女王は聖性を剥ぎ取られたむき出しの女性として描かれている。




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いったんはバルタザールを虜にしながら、別の男に乗り換え、絶望したバルタザールが自分の国(エチオピア)に帰って、神の愛に目覚め、もはやシバの女王を愛していない、という話が彼女の耳に入るや、許せない、もう一度虜にしてやる~と出かけていくのだ。
愛ではなく、自尊心を傷つけられたための女性特有の行動だ。(男もそうかも知れないが)。
思い当たる男や女も多いだろう。

シバの国はイエメンとエチオピアの2説あるそうだが、どちらの作品もイエメンをシバの国としている。


リヴァイヴァル復刊で買った角川文庫は、読まずに積読していたので、この際読んだら、訳者前書きにこんな一文があった。

「1884年2月、アメリカのニュー・オリアンズの1新聞に「狂へる浪漫主義者」(ネルヴァルのこと)と題する注目すべき文章が載った。それは恐らくこの作品に対する最初の評論であった。しかも筆者は東洋と夢との詩人、若き日のラフカディオ・ハアン」

ボクは全く知らなかったが、この事実もかなり知られているようで、ネットで紹介されている。

しかもネルヴァルに関する一文を含むハーンの「東西文学評論」が昭和6年に岩波文庫から刊行されていて(昭和8年には8刷になっていたので、広く読まれたらしい)、ネルヴァルのことを書いていたブロガーさんが、その箇所をまるまる転記してくれていたので、読むことが出来た。

感謝である。






花ブログも自認しているので、違う角度から撮ったツルバラ。


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音楽はサイケがいいだろうね。

Pete Morticelli - Lost

https://youtu.be/cTUL-tKwAz8


知り合いだというUの書き込みは信用できないのが多いんだけど、最初の Rick White のコメントはなんとなく信用できる。

物語では、ソロモンがバルキスを失うことになるので この曲を選んだ。
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マイナーな60年代ビートミュージックと駄洒落、読書レビュー。

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