FC2ブログ

記事一覧

レオ・ペルッツ「聖ペテロの雪」・・・The Darwin's Theory /Alan Jack Civilization




国書刊行会からの4冊目となるレオ・ペルッツ。

過去3冊と違い、執筆当時(1932年)の同時代物語。

同時代とはいえ、物語はやはり過去の歴史に向かう。





主人公は病院で目覚め、医者は5週間前に交通事故に遭って意識不明だったという。

主人公の記憶は違っていて、5週間前に小さな村で暴徒に襲われて頭を殴られたのだった。



医者が事故に遭ったという冒頭の箇所を読み返すと、巧妙な仕掛けがあって、事故に遭ったとも読めるし、危うく事故に遭いそうになりながら、何事もなく汽車に飛び乗ったとも読める。

医者の話が正しいなら、その冒頭箇所は5週間前の出来事だが、主人公の記憶では5か月前の出来事だ。



物語は主人公の記憶に残るその5か月間の出来事を追っていく。

物語の概要はネットで読めるので、気に入った文句だけを抽(ぬ)き出そう。







「2日もあれば女はまるっきり変わる」

含蓄だ。

どれだけの男が、女性の豹変に気づかず泣き暮らしてきたことか。


ブロ友さんの実話を思い出した。

離婚した元妻に復縁を迫ったところ、彼女曰く「女は直角に曲がるから後ろが見えないの」。

名言だ。

唸ってしまった。






「なんと幸せな男よ。夢の中のものは奪い取れない」

「過ぎ去った現実と夢との違いは、なんとわずかなものだろう」

この言葉も深い。

妄想の中で生きる人間ほど幸せな人種はいない。

他人にとっては大迷惑だが。




32年というと、ナチが政権を取る1年前。

ユダヤ人のペルッツにとっては、他人事ではなかったはずだ。


神が祝福し地上を統(す)べるべく創(つく)り給うたのがアーリア人で、悪を撒き散らす絶滅すべきウジ虫がユダヤ人、というナチの妄想教義に怯えていたはずだから。


主人公を雇う地方領主は、13世紀に断絶したホーエンシュタウフェン家の神聖ローマ帝国再興を夢見るわけだが、彼は断絶したはずの正当な血統を見出したとして、仕立て屋の息子を手元に引き取り、玉座につけるべく教育を施している。


小麦やライ麦は「麦角(ばっかく)」と呼ばれる病気にかかるそうで、この病気の蔓延と、西洋史に噴出する宗教的情熱が引き起こす戦争(ほんとんど異端と正統派カトリックとの戦争)の間には因果関係があり、領主によれば帝国再興には民衆の宗教的熱狂が必要なので、病原菌から抽出した麻薬を民衆に与えれば、神聖ローマ帝国は再興なるという。

科学者でもある領主は見事麻薬製造に成功する。

病気の成分、天然アルカロイドが発見されたのが38年、合成アルカロイドすなわちLSDが製造されたのが40年代。

小説は先を行ってるわけで、小説家の想像力って、なんてすごいんだろうと驚いてしまう。

ところが、薬物によって宗教的情熱が高まるはずだったのに、領民の情熱は宗教否定のコミュニズム賛歌へと向かい、革命的暴動が起きる。

この過程で主人公は殴打され、意識不明になるのだ。

そして目覚めた時、食い違いが生じる。

果たして、主人公の妄想なのか、それとも医者や看護婦ら多人数による歴史の改変(もみ消し)なのか、答えは読者の手に委ねられる。


ボクはこの結末に全体主義の恐怖を見る。

この小説が80年あまりもたってから邦訳されたのは、現在の日本を覆う状況と無関係ではあるまい。


穀物がかかる病気(麦角)のことを中世のヨーロッパでは「聖ペテロの雪」とも「聖母の大火」とも呼んでいたそうで、何と美しい言葉なんだろう。


















日曜日は彼岸の中日。

好天だったので墓参りに行った。

お寺の桜はまだだったが、民家の白木蓮が咲き誇っていた。


















ちょっとウンチクすると、白木蓮は「白蓮」とも言うが、白い蓮も「白蓮」と書く。

そこで俳句では両者の混同を避けるため、白木蓮のほうは「白蓮(はくれん)と読み、白い蓮の方は「白蓮(しろはす)」と呼び馴らわしている。



白蓮と言えば、大正時代の3美人と謳われた歌人の柳原白蓮(びゃくれん)。

人妻ながら、7歳も年下の大学生と駆け落ちした事件が有名だ。

ボクも随分憧れたのだ(笑)



























ここんとこ、忙しいので新しい音楽を聴いてない。

ブロ友さんへの訪問も滞りがちだが勘弁召されよ。


そんなわけで音楽も以前取り上げたバンドを。

前回、マルセイユのバンド Les 5 Gentlemen を取り上げたが、その際、ブロ友さんにUKでも別名義でレコードを出していると教わった。

Darwin's Theory 名義で Hosanna。

Them の Gloria を意識したこの曲、実は聞き知っていたのだが、同じバンドだとは知らなかった。




その折、もうひとりのブロ友さんからこのバンドにいた Claude Olmos(g)が解散後に Alan Jack Civilization というバンドに加わったのを教わった。

ビートミュージックに代わる新しいロック誕生期の音なので、雰囲気が違うが、こうしたブルースロックは当時のボクを熱中させたのだ。

Baby Don't You Come Back Home。





















スポンサーサイト



コメント

No title

Rattlesは、Philips/star clubと似たような、でも別録音のアリオラ・アルバムを出していて、ちょっと不思議だ…

まあ、こっちの方が有名かも?
The Rattles - Baby, That's Rock and Roll (Philips version)
youtube.com/watch?v=x2yYOdt0644

The Shamrocksは、From Ryde (Isle of Wight) U.K. ですね。

そういえば、ハックスリーの「素晴らしい新世界」にも、政府が配布する"the perfect drug,"が出てきたな…

「聖アントニウスの火」をバンド名した、音は美しくなく、ヘヴィ…
Sainte Anthony's Fyre - Lone Soul Road (1970)
youtube.com/watch?v=6FsCDwp3a0Q

No title

こんばんは~、直角に曲がったら、いままで通った道が丸見えですが(笑)背中は、どうしたって見えないし、全く女性は論理的じゃないから、嫌いです。いや、どうかな(笑)
ビート系って詳しい人が多いんですね~、一曲目は、御膳だぁ~って聴こえました(笑)

No title

weirdoさん、Baby, That's Rock and Roll はフィリップスヴァージョンとアリオラヴァージョンの2種類あるんですね。
どちらもボクも持ってるアルバムには収録されてないので興味深く聴きました。

Mashed Potatoes に通じる初期の荒々しいサウンドが聴けて。とてもいいですね。

ハックスリーのその全体主義小説は読んだことがないです。
ディストピアの世界は、小説だけにしてもらいたいけど、現実の理想だと妄想する馬鹿が多くて困ります。

聖ペテロの雪の別名、聖アントニウスの灯、というバンド名まであるんですか。

No title

tomozoさん、嫌いです、って~(爆)
世界には男と女しかいないんだから大いにすきになりましょう~

ははは~たしかに御膳だ~と聞こえなくもないですね。
お腹が空いてる時の食べ物の歌だったんですね~知らなかった

ナイス有難うございます~

No title

> sho*ha*ng*5さん
BYGのイラスト
すきです。
なぜか?
ビリケンさんのお顔立ちと
にているような....
紹介ありがとうございます。

No title

まりっぺさん、言われると似てますね(笑)
このBYGレーベルは当時最先端のヨーロッパジャズ(主にフリージャズ)を積極的に紹介していたので、ジャズの専門レーベルだと思い込んでました。
ロックも扱っていたなんて知りませんでしたよ。

ナイス有難うございます~

No title

こんにちは、

白木蓮も白蓮さんも美しいですね。
三美人の中では…
どちらかというと、林消臭剤、もとい林きむ子さんのバタ臭い顔が好みです。

Alan Jack Civilizationのジャケ、フランスだけにメンバーがお洒落に見えます。

No title

BYGはRock generationて、シリーズを出していました↓

http://slowhandbcn.com/var-rockgenerationvol2.html

まあ、Jean Luc Youngは、Charlyの創始者なので…

日本盤は、東宝レコードから↓
http://www.jauce.com/auction/n193347416

No title

nicohoiさん、林きむ子は今風の美人なんでしょうね。
ボクは和洋どっちも好きなので文句は言いません~(笑)

教えていただいたこのバンド、BYGレーベルだったのでびっくりしました。
ジャズ専門のレーベルだと思い込んでたから。

ナイス有難うございます~

No title

weirdoさん、えっ、Charly の創始者でもあったんですか~!
びっくり。

アニマルズとヤードバーズの2枚シリーズですか。
72年というと、まだレコードは売られていたはずなんだけど、中身が貴重なライブ音源になってますね。
さすがだなあ~

邦盤まであるのに驚くけど、72年ならまだこのへんの需要は確かにあったと思います(わずかだけど)。

日本では前衛ジャズのレーベルとして当時は有名だったんですよ。

No title

「女は直角に曲がるから後ろが見えないの」
かっこいい名言ですね~。
でも確かに女性のほうが、男性と別れてもすぐに立ち直ると言われますよね。

この作家さん、要チェックに入っていますよ。
今回もおもしろそうですね。
今ぞくぞくと発売されているというのがおもしろいですけど、
確かに今の世界情勢を表している感じもしますよね。

白蓮さん、美しいですよね。
私は美しい男性より美しい女性を見るほうが好きですね~。

No title

Mymbleさん、やっぱり女性の方が立ち直りは早いですか~!
たしかにねえ・・男の方がいつまでもうじうじと未練を引きずりますね。

国書からのこの作家は4冊で終わりだそうです。
既訳が2冊あるようなのでそれも読むつもり。
あと短編が訳されてますね。
こんな素晴らしい作家がいままで放置されていたというのが信じられないです。
彼の作品には政治的発言は何も出てきません。
ただ執筆の時代的背景を考えると、どうしても深読みしたくなります。

柳原白蓮、ほんとに美しいですよね~

ナイス有難うございます~

No title

女性の名言に納得だわ('∀`) 私も言ってみよう~♪♪
聖ペテロの雪って幻想的な響きだけど穀物の病気のことだなんて;
柳原白蓮って線が細そうな美女だけど大胆な情熱家だったのね♪
Hosanna、確かにGloriaを意識したように感じるわ('∀`)
Alan Jack Civilizationとは雰囲気が変わるけどBaby Don't You Come Back Homeもかっこいい曲ね♪

No title

joeyさん、女性なら一度は言ってみたい台詞なのか~
啄木さんもそんな経験をしたので「われ泣きぬれて蟹とたわむる」という名歌を残しました。
男性の創作意欲を掻き立てる言葉なんですね~

穀物の病気にこんな素敵な名前を付けるなんてお洒落ですよね。
こんなお洒落なネーミングなら、ボクも同じ病気になりたいです~(笑)

美人で情熱家、男性の理想ですね(笑)

Hosanna より、Baby Don't You Come Back Home のほうがボクは好きです。
ただバンドはこの後はどんどんヘヴィーになっていくので、今の気分には合わないけど。

ナイス有難うございます~

No title

これまた面白そうなストーリーですね。
ラストが気になるぅ・・・書かないでね!読みたいから。

shoさんのブロ友さんの「女は直角に曲がるから後ろが見えないの」名言!
そして、いたく納得です。

No title

Irisさん、この作家はどれを読んでも面白いです。
イチバンのお勧めは「夜毎に石の橋の下で」だけど。

で、女性としてはやっぱり名言に納得ですか~!
女性の方は皆さん納得するからそうなんですね。

男はいつまでもうじうじ引きずるんだけどなあ~

ナイス有難うございます~

No title

表紙の絵がもの凄いアートですね^^最近あまり見かけない感じなので凄く新鮮です^^

御寺の建物も歴史を感じます^^

ナイス!

No title

ゴールドさん、表紙絵を賛美する人、多いですね。

お寺の方は鎌倉時代の建築物です。

ナイス有難うございます~

No title

こんばんは(-^ワ^-)

今日も宜しくお願いします

お寺の門の美しさに('∇^d) ナイス☆!!です

WBCも終わり…

舞台は高校野球、清宮君にスポットライトが…

ニュースは籠池さんで持ち切り…

話題に事欠かない毎日ですね

ワタシは相変わらず落ち着かない毎日を

過ごしています(〃▽〃)このままではダメやわ~

shohang5さんにとって今日という日が

充実した日になりますように祈っています

ファイト♪。゜㋔✿㋳✿㋜✿㋯✿㋤✿㋚✿㋑

No title

カノンさん、うわ~真夜中のコメントじゃないか~!
若い女の子の夜更かしはお肌の大敵ですぞ~

桜はどう??
こっちは足踏み状態です。
桜の季節になると京都に行きたくなるんだよね~

ナイス有難うございます~

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

showhanng55

Author:showhanng55
マイナーな60年代ビートミュージックと駄洒落、読書レビュー。

月別アーカイブ

全記事表示リンク

フリーエリア