FC2ブログ

記事一覧

レオ・ペルッツ「スウェーデンの騎士」・・・音楽のない音楽ブログ

ゲスプにお気遣いの言葉を寄せられたブロ友の皆様、返事は書き込みませんので、この場を借りて御礼申し上げます。













レオ・ペルッツにすっかりはまってしまったらしい。

未知の中東欧の歴史や風俗が、背景に見え隠れしているせいだ。



3冊目に読んだのが2015年に翻訳されたばかりの「スウェーデンの騎士」。

原書は36年刊。



貴族の若者と泥棒が雪のシレジアで知り合い、2人の人生が不思議な運命で交錯する物語だ。

始まりの時代は1701年とある。


この時代のスウェーデンだのポーランドだのロシアだの神聖ローマ帝国だの、プロテスタントとカトリックの戦争だの、ボクは無知なので、描かれる雰囲気そのものが魔術的で幻惑される。

近世まで、西欧社会では白魔術が普通に行われていたみたいで、物語でも庶民や貴族が普通に白魔術を行っている。

こういう世界が好きなボクはワクワクするのだ。



貴族の若者と泥棒が人生を取り替えて、泥棒は貴族としての人生を生き、若者は囚人として7年を過ごす。

若者が囚われるのは、僧正の鉱山となっていて、一応地上にあることになっているが、この僧正とはサタンのことで、鉱山はサタンの支配する煉獄か地獄のアナロジーだと思ってよい。

ナチの時代に書かれているので、先取りしたアウシュビッツの予言かも知れないが。

この鉱山では武器を製造して売り捌き大儲けをしていることになっているので、ヒトラーの失業対策(軍需産業に圧倒的な予算をつぎ込み、大恐慌で路頭に迷った失業者を雇用する)をあてこすっているのは間違いあるまい。



若者と泥棒の2人の黙契は、僧正の代理人の前で行われる。

この代理人は、いったん死んだ人間。

僧正が必要とするときだけ生き返り、僧正のために働く。

ここにも僧正=サタン=ヒトラーの同一性が見られる。



7年後、泥棒と貴族は元の人称に戻る。

この後半に至るまでの叙述は実に素晴らしい。

一本の線を直線的に描いてゆくので「夜毎に石の橋の下で」のような魔術的な小説技巧はないが、地にたゆたう霧のように、湧き出る夢幻的な美しさが迫ってくる。


2人の人称が元に戻ってからのラストは、1転して小説ならではの技巧に唸らされる。

若者はスウェーデン王のもとに馳せ参じて華々しい武勲をあげるが、その栄誉に心躍らせる奥方も娘も夫であり父である貴族(本当は泥棒)のことだと信じている。

戦死の報で娘は父のために祈るが、ちょうどそのとき、本物の父(泥棒)の棺が名無しの棺として、娘の前を通っていくのだ。

このへんの構成が実に巧みなんだけど、正直に言うと、知に流れ過ぎてるように感じて、前半の感動がいささか減退する(ボクの場合は、だけど)。


解説を訳者の垂野創一郎という人が書いていて、これ以上の解説は現れないだろうと思うくらいに素晴らしい。

だからボクも解説は止めて、備忘録的な記事にする。


本文同様、この解説は特筆ものです。
スポンサーサイト



コメント

No title

おっ、再開ですか!

何はともあれ、再開は良かったですよ!

なんと、知的なレヴューですか、、

日を追う毎に、幼稚園児可していく、自分が恥ずかしい(笑)、、

推理小説ならば、いくらでも知ってるけど、この手の話となると、あかん、、

読めるのかなぁ、、読まず嫌いなだけか、、

No title

umeさん、再開というか、時々記事を上げていきますのでまたよろしくお願いします。

この小説はまるで絵本を読んでるようです。
全然難しくない。
ただ深いところで理解しようとするとそれなりの操作が必要なので、ボクの記事は手がかりを残してるだけです。

騙されたと思って手に取ってみてください。
たちまち夢中になりますよ~

ナイス有難うございます~

No title

お帰りなされませ~、よかった
面白そうな本ですね~好みじゃーーー。
この頃とみに読書量が減ったわたくし、せっかく面白い世界が広がっているのに・・・PCの時間を減らそう

No title

じゃむとまるこさん、あんまり面白かったので一気呵成に読み終えましたよ。
翻訳も丁寧だし、世界も魅惑的だし、言うことなしです。

ナイス有難うございます~

No title

こんばんワンダフル(^0^)

shoさんお元気そうで良かった♪
読書が楽しめるなら体調は大丈夫なんですね~

歴史小説というより冒険小説なんでしょうかね
貴族と泥棒が知り合う・・その設定を聞いただけでも面白そう♪
読書離れしてるので読まないと思うけどshoさんの解説は興味をそそられるわね!
死んだ人間が生き返る とか、貴族と泥棒が7年間入れ替わる とか、
展開がワクワクしてくる♪
映画化されても面白いかも

No title

お帰りなさいませ~。

お早い帰還でしたね。

近世以前は、ヨーロッパでは庶民も貴族もよく白魔術を行っていたのですか。どんな事が出来るのかな。占いなんかもやっていたのでしょうね。

レビューを見ると、随分と幻想的なお話のようですね。それにしても、翻訳本が出るのが遅かったですね。面白そうな小説だから、とっくのとうに翻訳されていてもよさそうな物なのに。

君の名は。みたいに、二人の身体が入れ替わってしまうのでしょうか。不思議な雰囲気の小説、私も好きですよ。これは、最初から最後までミステリアスな小説みたいですね。いかにも、sho さんが好きそう。

No title

おぉ('∀`) 何か忙しいのかと思ってたけど
本を読む時間もあって安心したわ♪
この辺りの時代背景やストーリーは好きな作品が多いから
読んでみたいわ♪
元気そうで何より('∀`)

No title

チロルさん、歴史小説であり、冒険小説です。
しかもあり得ない設定で物語が進んでいくので、幻想小説でもあります。

この人の作品はどれも(まだ3冊しか読んでないけど)、映画化に向いてると思います。

No title

yan_yanさん、ただいま~(笑)

白魔術は神様に認められた行為なので、魔術を使て良い結果をもたらそうとします。
占いとはちょっと違います。

こんな面白い作家がなぜいままで紹介されなかったのか不思議です。
調べたら、80年代に最初に紹介され、以後途絶えてました。

体が入れ替わるんじゃなくて、名前や経歴が入れ替わるんです。
その入れ替わり方が巧みなので、読者はなめらかに感情移入できます。

ほんとうに最初から最後までミステリアスな小説でした。

No title

joeyさん、ちょっといろいろあったんですよ。
再開するのでまたよろしくお願いします~

大きく分類すれば幻想小説の系譜に入るんだろうと思います。
そこに歴史やミステリーが絡むので、目くるめくような興奮度です。
3冊の中では一番読みやすいタイプの作品でした。
図書館に行ったとき探してみてください。

ナイス有難うございます~

No title

おかえりなさい!(*^▽^*)
のんびりご自分のペースで書いてくださいね。
Shoさんとは末永くお付き合いしたいですから。

白魔術とか黒魔術とかの話ですか?
もっちろんそういうの大好きです。
もしかして読書に没頭してました?
これもAmazonの「欲しいものリスト」に入れておきます♪

ご紹介ありがとうございます♪(*^^*)

No title

Irisさん、ただいま~(笑)

白魔術はあくまでも小道具です。
説明もなしに使われるので、知らなければどういう意味だろう?? となります。

風邪を引き体調を崩したので、この2日、ペースが落ちたけど、久しぶりに読書に没頭してます。
この際だから普段読めない大作に挑戦してるんですよ~エライッショ(爆)

ナイス有難うございます~

No title

おかえりなさい!
風邪の調子がよくなって良かったです。

レオ・ペルッツは、日本帰国時に探す本リストに入れていますよ!
英語でも読めるみたいですが、日本語のほうがすらすら入りそうです。
魔術ってきくと、私もわくわくしますね。
この本は、最初にレオ・ペルッツをアマゾンで見ていたときにこれおもしろそうと思っていたやつなので、感想がお聞きできて良かったです!

No title

Mymbleさん、ただいま~(笑)

風邪が治らず、具合が悪いので返事が遅くなりました。

原書がドイツ語なので、同じ翻訳なら日本語のほうがすらすら入ると思います。
第一、この垂野さんという方の翻訳が惚れ惚れするくらいに素晴らしいんですよ~
童話や絵本を読んでるような感覚です。
タイトルも装丁も素晴らしいですね。

ナイス有難うございます~

No title

風邪だったんです🤧か?インフル流行ってますから、お気を付け下さいませ。
多読ですね~、図書館行ったらチェックしていますかま、小さな図書館なので.なかなかないです(笑)

No title

tomozoさん、いや、風邪は金曜日から。
3日寝込んで、今日の夕方からようやく起きだせる状態になりました。

ほとんど読書マニア、ビョウキです(笑)

この作家を図書館で見つけたら、なんでもいいので是非お読みになるといいです。
病みつきになります(笑)

ナイス有難うございます~

No title

「地にたゆたう霧のように、湧き出る夢幻的な美しさが迫ってくる」
なんと素敵な表現!
読んでみたくなります。
解説文が秀逸って、時々ありますよね。
惹かれます。

No title

まこちゃんさん、おお~嬉しいお言葉、有難うございます~

解説文の出来があまりにいいと、解説だけ読んで本文を読まないこともありますよね(笑)

ナイス有難うございます~

No title

おかえりなさ~い^▽^
お風呂になさいますか?
お食事になさいますか?
それとも・・・♡
とまぁ、冗談はさておき、改めておかえりなさいませ^^

>未知の中東欧の歴史や風俗が、背景に見え隠れしているせいだ

この一言に僕もひきつけられました!!すごく面白そうです^^
そういえば、外国の小説というのは、スティーブン・キングの「グリーンマイル」以来読んでいないような気がします。

No title

のぶさん、いいなあ~メイド喫茶って行ったことがないからここで気分を満喫できました。
有難う~(笑)

知らない歴史や風俗って興味が湧きますよね。
ボクが古代ギリシャや古代中国にはまったのも同じ理由です。

「グリーン・マイル」は小説は読んでなくて、映画(TVで放映された)を観ました。
いつまでも印象に残る作品でしたね。

ナイス有難うございます~

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

showhanng55

Author:showhanng55
マイナーな60年代ビートミュージックと駄洒落、読書レビュー。

月別アーカイブ

全記事表示リンク

フリーエリア