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久生十蘭の珠玉短編「生霊」・・・・Lunar Dunes




今年も彼岸花が咲いた。

彼岸花が咲くと、彼岸の日が近いのを思い出す。

決まってお彼岸前後に咲くこの花は、考えてみれば不思議な花だ。



1昨日の中秋の名月は雲が邪魔をして見えなかった。

昨夜、夜8時ごろ煙草を買いに10分ほど歩いたところにあるコンビニに行ったのだ。

すると、山の端(は)近くに浩々と輝く十六夜の月が。

余りの美しさにしばらく鑑賞してからコンビニへ行ったのだ。

コンビニで買い物を済ませ、外に出て空を見上げたら、月がない~!

わずか十数分の間に盗まれたらしいのだ。

なんてこった~!

異常な事件が相次ぐ今の日本だが、ついに月盗人(ぬすっと)まで現れるなんて~世も末だ~



交番へ被害届を出しに行こうとしたら、雲が慌てて追いかけてきた。

あのう~お腹が空いてたのでわたしが食べちゃったんです~許してください~
と涙ながらに訴えるじゃありませんか~

分かった。

じゃあ~あとでトイレに行ったらちゃんと返しておくんだぞ~と言って別れたが、約束を守ったらしい。

深夜2時ごろ見上げたら、薄雲をまとったお月様がぼんやりと金色に輝いていた。



なんでこんな話を始めたかというと、久生十蘭の短編「生霊」を思い出したからだ。

木曾の山奥の村では、お盆の日に新仏が生き返って来て、家族と団欒する風習があり、主人公が戦死した新仏の代わりを務めると言う話なのだが、玲瓏とした幻想に満ち満ちた傑作なのだ。

文庫本でわずか30ページほどなので、ぜひご一読ください。

文章の美しさ、小説としてのたたずまいの美しさ、たちまち虜になるはずだ。


月の明るい晩、辣韭(らっきょう)畑で踊っている女狐に主人公は出会う。

抽(ぬ)き出すと、

「よく透るくせに、どこかふっくらとふくらみのある声で、盆、盆、ぼんのおどりもきょうあすかぎり、明後日(あさって)はなんとかのなにやらさ、と歌いながら、しなやかに手先をくねらせてしんねりと踊っている。」

主人公は面白がって、「こらさのよいやさ」と調子をとりながら真似ると、狐が振り返って言うのだ。

「踊るのはいいけど、辣韭を踏んづけちゃだめなのよ」


勿論、人間の女性だけど、狐と言い合うこのへんの呼吸がたまらないのだ。


「まあ、生意気だ・・・いやな狐」
「どっちが! 縹緻(きりょう)がよくたって、あまりいい気になるな」
「わかった・・・あたしが笑ったんで、それで、むくれているんだわ・・・そんな恰好をしていないで起きなさいってば! 尻尾がまるだしだ」



戦死した彼女のお兄さん(よく似ていることになっている)の代わりに、生霊として老いた祖父母(両親はすでに他界)を慰めることになるわけだけど、この月夜のシーンは特に美しい。




































今日の話にぴったりのバンドがいるので聴きましょう。

その名も Lunar Dunes。

現代のUKサイケバンドで、おまけに、なんと Moon Bathing(月光浴)の曲名だ。

(この曲が特にいいとは思わないので適当なところで切り上げてくれ。他にいい曲が隠れてます)























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コメント

No title

久生十蘭には、立派なファンがいて、大仏次郎、中井英夫、都筑道夫、ああ、柴錬もそうでした…

「春雪」や「黄泉から」、「奥の海」のごとく溢れるような純粋な愛情を押さえて描く作品もいいですが、いまでも読み返すのは「ハムレット」や「黒い手帖」のような運命の皮肉を感じさせるものかな…

スタイルは異なるが、やはり函館出身の長谷川海太郎にも共通する「ハイカラさ」を感じます。

No title

じゃむとまるこさんも渋澤さんのファンですか~!
嬉しいですねえ~

ボクが一番影響を受けたのは、小説家としての渋澤さんじゃなくて、美の水先案内人としての方なんだけど、「高丘親王~」は渋澤さんが持論にしていた唯美の世界に溢れていると思います。

No title

weirdo さん、この時代の作家で、今これだけ文庫になっている作家は少ないですね。
読者を多数確保している証拠です。

大仏さん、柴連になると大物過ぎるんだけど、中井英夫が人気があるのは分かります。
ボクもいまでも時々手にしますね。
いちどお会いしたかった人でした。

丹下左膳はともかく、メリケンモノや牧逸馬名義のものが今現在、これだけ出ているなんて、ググるまで知りませんでしたよ~

No title

久生十蘭賛

「私の知る範囲で、鬼才の名に値する人間がいたとすれば、若い久生十蘭であった」
大仏次郎
「あまりにも正統であるために、異端であるとみられている作家」
都筑道夫
シバレンは、「母子像」をヴィリエ・ド・リラダンの最高作に匹敵すると褒めたし、中井英夫は蒐集家としても有名でした…

岩波文庫に十蘭傑作選、谷譲次「躍る地平線」もはいっていますね。

No title

weirdoさん、あっゴメン~先のコメントの最初の部分誤読してました。

大仏さんが評価してたのは知ってるんだけど、柴錬さんがそこまで評価してるのは知らなかった。
その「母子像」の言葉は聞いたことがあるんだけど、柴錬さんでしたか~!

都築さんは世界が重なるので納得ですし、中井英夫もそうですね。

しかし、中井さんが久生十蘭関係を蒐集していたとは~!
全く知らなかったです。

岩波文庫にも谷譲次が収録されるようになったんですか~!
明日にでも本屋さんをのぞいてみます。
情報有難うございます~

No title

シバレンの言葉を引用すると、
「日本に於ける戦後文学の最高傑作を一篇だけ挙げておく。『母子像』という短篇である。これは『純文学』作家によって、書かれたのではなく、いまはその名も忘れられかけている久生十蘭という『大衆作家』によって書かれている」

「その出来栄えは、森鷗外にも、メリメにも、ポウにも、リラダンにも匹敵する。一字一句みがきぬかれた、文字通の珠玉の短篇である」

「母子像」は吉田健一が英訳して、賞を取ったはず…

教養文庫版十蘭傑作選五冊は、中井英夫編でした。

No title

weirdoさん、おお~有難うございます。
まだ純文学、大衆文学の線引きをしていた時代の文章ですね。

「一字一句みがきぬかれた」
学生時代、三一書房の久生十蘭全集を集めようと思い立ったのも、渋澤さんが同じように評していたからなんです。

教養文庫か~面白いラインナップが多いんだけど何十年もスルーしてます。
まだ存続してるんですね~!
出版界を離れて10年以上たつので(定年で離れたんじゃないからね。そこまで年寄じゃないぞ~笑。50そこそこで離れたんです)
何がどうなっているのか、分からないのが実情なんですよ。
ネット以外、社会との接点もほとんどなくなったし・・。

No title

weirdoさん、ひと眠りして読み返したら、吉田健一さんのことに触れてなかったですね。

神田神保町に「ランチョン」という店があるんだけど、先生はこの店の一角に陣取って各社の編集者と会ってました。
調べたらお店はまだ営業してるみたいです。

No title

sho*ha*ng*5さん
久生十蘭 よめませんでした。
くぜとらんで検索しました。ちがう
漢字で別々に久生十蘭と入力したよころ
やっと、ひさお じゅうらんとウィキペディアに
ヒット。55歳で亡くなった方。だと...
この方の小説、読んだことありません。
紹介ありがとうございます。

No title

初めて聞く作家です。精緻な筆致というのはよいものですね^_^
清らかな月明かりを浴びて読みたい作品なのでしょう。
Moon Bathingもやはり月夜に聴きたくなりますね。

今日は。。。今日も清らかな記事をありがとうございます!!

ゴーストライターじゃないですよね??(笑)

No title

まりっぺさん、文庫で何冊か出てるようなのでご一読をお勧めします。
まりっぺさんの好みがどのへんにあるのか分からないんだけど、作風が多彩なので、気に入らないなと思ったら、次の作品に進むといいです。
ただどの作品も彫琢の文章です。

ナイス有難うございます~

No title

のぶさんが初めて聴く名前だったとは~!
昔の作家だからそんなものなんでしょうね。

河出文庫のこの1冊は、「生霊」の掌編を読むだけで価値があります。
何度読んでも酩酊しますよ~

トイレに行って返してもらった金色のお月様の光を浴びながら聴く「月光浴」、すっきりした浮遊感がありますね(笑)

清らかな記事だったでしょう~

No title

社会思想社はなくなってしまったので、教養文庫も姿を消してしまいました…
谷譲次、牧逸馬もまとめて出していましたが…

ところで、吉行淳之介が「モダン日本」の編集者だったとき「湖畔」を読んで、すこぶる感心した、「作品については関心のある作家という域にとどまって、中井英夫のように熱読者にはならなかった」が、「久生十蘭氏の風貌は、いまでも脳裏にあざやかである」と語っていました。

No title

白と黄色の彼岸花があることを

最近知ったカノンです(〃▽〃)

勉強不足やわ~

No title

weirdoさん、吉行さんの話は知らなかったけど、渋澤さんも「モダン日本」を手伝っていたことがあるんです。
だから、鎌倉に引っ越してきたとき、引っ越しを手伝ったそうですよ。

吉行淳之介の作風と久生十蘭の作風では違いすぎるので、熱心な読者にはなれなかったでしょうね。

教養文庫は姿を消しましたか~本の売れない時代だから、小さなとこはどこも苦しいでしょうからね。

No title

カノンさん、そうです。白い彼岸花もあって紅白を楽しんでお宅もあります。
白のほかに黄色い彼岸花も最近は見かけるようになりました。
どちらも比較的新しいはずです。
厳密には赤い彼岸花とは別種だそうだけど、そんなのは植物学者に任せておけばいい。
ボクらには同じ彼岸花の色違いって認識でいいと思います。

ナイス有難うございます~

No title

花類はあまり観察した事がないんですが、しょうがのような色が綺麗ですね~しかも形が不思議で面白い~
わずか30ページの文庫本なのに中身が濃い内容なんですね^^河出書房とはマニアック~
音楽もナイス!

No title

ゴールドさん、それと知らずにこの季節、毎年眺めてるはずですよ。
彼岸花、または曼珠沙華といいます。

中身の濃さは文章の長さに比例しないんです。
とにかく素晴らしい作品なので、この1篇だけ読むのをお勧めします。
河出はいまは弱小出版社になったけど、昔は準大手だったんですよ。

ナイス有難うございます~

No title

joeyさん、このバンドは、ママちゃんの好みだと思うもので教えるといいです。
多分気に入るかもです。
ボクやじょ~いさんの好みからははずれるけどね(笑)

No title

チロルさん、ナイス有難うございます~

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Author:showhanng55
マイナーな60年代ビートミュージックと駄洒落、読書レビュー。

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