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この胸に深々と突き刺さる矢を抜け・・・The Rats






白石一文「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」(講談社文庫、上下)を夢中になって読みふけってしまった。

内容紹介や感想はネットに溢れているので、思うところだけを書き留める。


冒頭「ミリセカンド(千分の1秒)の変化が僕には分かった」とあって、この感覚をボクは知っている。

退院してから1年くらいたった頃、現実が自分の存在とぴったり合わさっているのでなく、ミクロの距離でずれているのを感じたからだ。

たとえて言うなら、ボクは、現実をガラス1枚隔てた向こう側から見ているような感覚だった。

ボクの本体はここに在るのではなく、別の次元から投影されていて、だからこの世界のボクは影のようなものと感じていたのだ。

のちに宇宙論の本を読んだら、ホログラフィック理論というのがあって、この世界は宇宙のどっかから投影されたホログラムにすぎないと唱えている学者たちがいるのを知ったけれど、彼らもこの感覚を体験したのかもしれないな、などと思ったりした。

今は自分という存在と現実とが隙間なくぴったり合わさっているので、元に戻ったわけだけど。

白石一文の主人公も40代の若さで癌を発症したという設定になっているので、死に瀕したとき、人には見えないもが見える(感じる)のだろうと思う。




時間が過去、現在、未来と直線的に流れていると誰もが信じているけれど、オカルトの世界では、円環的に流れている、だから始まりも終わりもないと唱える人たちもいて、そんな世界観のことは目新しくはないが、時間は、過去にも未来にもでたらめに流れている、とする思考にはびっくりした。

そうか、そんな考え方もあるのか~。

だから主人公は死者や未来の自分に出会ったりする。

そのことが小説的にどんな意味があるのか、ボクには分からなかったが。





現在の世界を覆っている様々な問題を主人公は考えるが、解答のないこれらの問題はボクにはどれも面白かった。


ひとつだけ取り上げると、開く一方の富の偏在、つまり格差社会を正すには市場原理に任せるのでなく、国家という権力によって、富の再配分を行うべきだと持論を述べる政治家が登場してきて、それはそれでひとつの解答だし、障害を負った子供に対する真摯な態度もその1点では誠実なんだけど、作者は、結局は、自分の考えだけに囚われていて、権力を弄ぶだけの、世界に対して不誠実極まりない奴と突き放している。

この小説が発表されたのが2009年、現在の状況を先取りしていて、小説家の想像力の確かさに唖然とする。



小説の最後、主人公が長い漂流の末にめぐり合った女性に、「もう少し早く会いたかったな」と語る。
彼女は「いまが1番よかったのよ」と答える。

過去の時間を後悔して現在の時間を逃避するのでなく、未来の時間に希望を委ねて現在を捨てるのでもない。
今現在だけを生きることで、過去と未来に突き刺さった矢を抜き、これからも彼女と出会い続けることが大切なんだと結ぶ。
























Willie Dixon がつくり、Howlin' Wolf がレコーディングした Spoonful 。
いろんなアーチストが演ってるけど、クリームの影響が濃いヴァージョンがほとんどだ。

英国のマイナーバンド Rats の Spoonful はクリームより1年も早い65年なので、面白い解釈だ。

いったい誰の影響なんだろう?







Rats はデヴィッド・ボウイのバンドに加わった Mick Ronson がいたことで知られているが、この演奏はこのバンドに彼が加入する前のオリジナルメンバー時代。






















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コメント

No title

ホログラフィック理論ってプラトンのイデア論に近いんですね。
仏教でいう色即是空でしょうか。

そういう内容なんですか・・・ちょっと興味あるな~☆
しかしshoさんも読書家ですね。尊敬します。

No title

ミクロの距離でずれている・・・ですか。架空の話しでは無く
それを実体験されてたなんて怖いような気もしますが
病気を機にとか、生死をさ迷った体験をした事によって
今までの価値観が全て崩される事はあるみたいですね。。。
生きてる中で、絶対と思っていた事も、物を識別する脳の感覚も
実は全然当てにならないものなのかもな~なんて事を考えてしまいますね。
考えても分からないけど想像するのは楽しいです(*´∀`*)
過去と未来に突き刺さった矢を抜き・・・かぁ。
カッコいいな~
出会うべくして出会う時期や、人の存在はあるのかもしれませんね。

No title

この本は初めて知りました~^^;
生協の白石さんなら知ってるンだけど・・・
ミリセカンドの変化ですか~小説家ってすごいですね~
よくそんなこと考えつくよな~^^;

あ、ミック・ロンソンのギター好きです~!
凸✩~//

No title

snow さん、ホログラフィック理論の解説本を読んだわけじゃないので、その質問にはお答えできません。
が、大局的な捉え方は通ずると思います。
触ったり、感じたり、味わったりする、この世界は実体を持つ本質だと思い込んでるけど、実はその背後に本質が隠れていて、目に見える現象はその仮装であるという考え方ですね。

ナイス有難うございます~

No title

anzu さん、そういう感覚は1~2年続きました。
ボクの解釈はこうです。

東京から新宿へ行くのにいつも最短の中央線を使ってるとします。
ところが四谷で事故があって不通になったので、山手線で行くとします。
見慣れた中央線沿いの風景と山手線沿いの風景は異なります。
ボクも脳の一部が死んだので、通常の神経回路が使えなくなり、迂回路を通ったんじゃないだろうか、ということです。
元に戻ったのは、事故が修復された、つまりシナプスが再生して通常の回路が開いた、ということじゃないだろうか、と。
シナプスが再生するまでの間、見えないものを感じたり、オーラが見えたり、勝ち馬が分かったり、いろんな不思議なことがありましたよ。

人との、特に男女の出会いは、しかるべきときに出会うようにプログラミングされているように感じます。

ナイス有難うございます~

No title

小説ではありませんが、ボルヘスのエッセイ集「異端審問」晶文社、(岩波文庫では、「続審問 」)中の「時間とJ.W.ダン」です。

エッセイと小説はそんなに違わないように思いますが…

J.W.ダンは予知夢から、この理論を思い付いたらしい…


>Rare Mod vol1 で、バンド名不詳、この盤で発掘されたという Can't Get None Of Your Loving Baby という曲

これもOak盤だったらしい…多分'66 年。

No title

weirdoさん、異端審問ですか。あれ、まだ読んでないです。
早速読んでみましょう。

で、Oak盤66年~!
おっ、すごい情報。
ってことは、いちどデモ盤を作ったってことになりますね。

No title

shoさんはもう、青豆のトコに行ったことあったんですね。

私はホログラフィック理論について「投影された宇宙」という本で知りました。
「私たちの世界はすべて、時空を超越したレベルからの投影である」「あらゆるものは分割不可能な全体である」
スピ論かと思うけど量子力学なんですよね。

これを読んでから、過去は変えられないっていうけど過去も変りうるな・・・と思いました。

No title

ミクロの距離でずれている・・・魂と肉体がなのかしらと思ったり。
なんとなく解るような、解らないような不思議世界です。
小説の最後のくだり素敵ですね。
それだけで読んでみたくなります。
ナイス☆

No title

春車さん、「投影された宇宙」って本に内容が紹介されてるんですね。
図書館で探してみます。
ボクは上っ面しか知らないから。

そうですね。
量子力学の中でも、超ヒモ理論ってヤツから出てきた説だそうです。

数学を使って、こんな難しいことを考える人たちの頭の中ってどうなってるんでしょうね。
先端物理学の一般読者向けの解説本を読んでると、まるでオカルトみたいに思えます。

ナイス有難うございます。

No title

まこちゃん、全く不思議世界です。
その不思議がときどきこっち側の世界に漏れ出てくるので、ブログ名も「不思議ワールド」になったんですよ。

ラストの文章、素敵でしょう~
上下2冊だから、少し読んで合わないと思ったら放り投げればいいんです。
はまったら最後まで一気読みしますよ。

ナイス有難うございます~

No title

若いときに出会っていてもダメだったかも~。
まさしくPTS。場所・時・状況・・・。
彼女はsmartですね。

No title

おぉ('∀`) 何だか最後のシメでこの本の終わり方が
とても素敵に感じるわ♥凸♥
最初のshoさんの体験だけど、人が死の感覚を体験して
こちらに戻った時は色々な体験をリアルに覚えているものね。
Mick Ronson在籍時のRatsはボウイ前で有名だけど
いない時代の曲もカッコイイわね('∀`)

No title

joey さん、お洒落な終わり方でしょう。
いわゆる恋愛モノじゃないので、そんなふうに期待すると肩透かしを食います。

パパちゃんも不思議な体験を語りませんか??

加わる前の方が、このバンドはビートロックを感じて好きです。

ナイス有難うございます~

No title

また~・・・カッコイイshowさんだものな~

(≧ω≦。)プププ
話題といい
曲といい
カッコイイ男が・・・キチンと決まります~

量子の世界では
時間が過去と未来の両方向に流れている説があるでしょう
showさんは
追求したいキモチわかるな

No title

ももちゃん、おお~嬉しいお言葉

時間の問題は知りませんでしたよ。
いろいろ教わったら面白いので、読まなくっちゃ~

ナイス有難うございます~、

No title

すごし易い季節に読書いいですね~^^夢中になってしまうと止まらないんでしょうね^^レビューもなかなか面白かったです^^

音楽もボーカルがカッコいいです^^

ナイス!

No title

死者や未来の自分に出会ったりする…

って

興味津々です。。。

読んでみようかなヾ(@⌒ー⌒@)ノ

ワタシは亡くなった母のような子供が欲しいです

子供が出来ない体(病気)なので叶わないけど

産むことが出来るのなら

母の名前をつけたかったです

って

全然話がズレちゃいましたね(〃▽〃)

No title

ゴールドさん、なんでもそうだけど、夢中になると止まらないですよね。
上下2冊、12時間ぶっとうしで読みふけりましたよ。
このバンドの Spoonful かっこいいですよね。

ナイス有難うございます~

No title

カノンさん、お母さんもその言葉を聞いたら嬉しさのあまり号泣するでしょうね。

え~、そうなんだ。
いつも明るいから、全然知りませんでしたよ。
へたれないカノンさんってすごいと思います。
その強さがあれば必ず幸せをつかめます。

ナイス有難うございます。

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マイナーな60年代ビートミュージックと駄洒落、読書レビュー。

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